第5回定例研究会「外国人は、なぜ日本のそのエリアに住むのか~地域別、外国人の在留状況~」

第5回定例研究会ではプロジェクトメンバーである大阪公立大学の水内俊雄さん、南山大学の福本拓さんに外国人人口統計から各地域に外国人受け入れのどのような特徴があり、全体的にみるとどのような課題が見てくるかをお話しいただきました。


水内先生は、現在の外国人人口分布から見ると、外国人受入の5つのパターンがあることを指摘されました。かつて「定住者」という在留資格で日系ブラジル人をたくさん雇用し、その流れでブラジル人人口が多い都市近郊や地方都市。技能実習にはじまり、特定技能を活用してベトナムやインドネシアから労働者を受け入れる地方町村の製造業、漁業、農業。北海道のスキーリゾートに典型に見るように、ニュージーランドやオーストラリア人を大量に雇用するリゾート型町村。東京23区を典型とする中国人永住者や高度人材が多数を占める、最終目標として外国人がめざす老舗型の地域。そしていま新しい外国人受け入れの流れをつくる、留学生が多数を占める大都市インナーエリア型。一見同じように見える外国人受け入れも地域によって大きな差があり、それぞれに連関しつつ日本国内の外国人の社会移動を形成している様子が浮かびあがります。


福本先生からはさらに都道府県、市町村の外国人の転出入を比較することによって、東京の外食産業へと全国から外国人が移動していく様をご報告いただきました。どのように受け入れるかだけではなく、どのように送り出すかによっても地域の産業文化に大きな影響を与えています。


ディスカッションでは、大阪外食産業協会の活動が留学生を中心としたアルバイト学生労働に支えられた外国人の移動実態が大きくかかわっていることも実感されました。特定技能外食は様々な在留資格の中でも特に都市-非都市格差を生み出していることはこの在留資格をつくるために活動してきた中でも予想され議論されてきたことではあるが、外国人に都市部への就労制限を加えるのは人権上問題があり、この問題は企業の成長戦略、キャリアプランの整備、雇用計画が三位一体で進められ、そこに政府の支援が加わって解決されるべき課題だということが共有されました。


将来の成長をしっかりと提示し、その中でどのようなキャリアパスでどのような給与体系を用意し、そのうえで日本人・外国人に関わらずどのような雇用を推進するかを明示することが企業の社会的責任であり、また外国人適正雇用の根幹であることが理解できたように思います。その先には、起業も当然視野に入るものであり、ORAとしても外国人の企業や経営をどう支援するか今後の課題です。これについては11月18日の研究会で大阪市西成区のベトナム人による事業を事例に研究会を行います。
こうした企業の施策を支援し、非都市部において雇用を確保できる政策を用意することが政府の責任として浮かび上がった今日のディスカッションでした。

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