11月18日に大阪外食産業協会の会議室に、ベトナム総領事館領事、ベトナム人経営者ならびに起業を目指す人5名、ベトナム人支援NPOなど関係者総勢60名が集いました。
会議のテーマは「なぜ大阪市西成区にベトナム料理店、ベトナム食材店が集中的に開業されるのか」です。
経営学の常識では競合がいる地域は起業する際の立地としては避けるべきです。しかしベトナム人の経営者は次々と西成区内、しかも新今宮と天下茶屋のあいだの小さなエリアに集中して開業しています。西成労働福祉センターの調査によって2022年には7つあったベトナム料理店のうち3つが廃業、8つあったベトナム食材店のうち4つが廃業しています。その一方で、この2年の間に飲食店の新規開業が4つ。食材店は7つも新規開業しています。同様の傾向はネパール料理、ネパール食材店でも見られます。
典型的な「収穫逓減」をきわめて短期におこしているのは、なぜなのか。ベトナム人経営者たちに直接に聞いてみました。
まず西成区は、留学生の在住がたいへん多く、ターゲットにしやすいことです。国勢調査のメッシュでも在留資格別にみると西成区における留学生在住率は高く、その胃袋をターゲットに出展するのは根拠があります。
しかし同じように考える競合他店がひしめく中で勝算はあるのでしょうか。
これについては「他店の経営者と出身地域が違ったり味付けの独自性が違うのでかぶらない」という答えでした。しかし結果を見ると廃業率が50%を超えているので、過剰供給であることは間違いないでしょう。廃業した人たちは出展費用の損失で大きな痛手を被ったことと想像されます。
借金の有無を含めてこのことについて聞くと、すでに他地域で一度失敗して西成にくらがえしたケースや、新規に開業した人を含めて明確に借金があると答えた人はわずかでしたが、あとで「その質問にまともに答える人はいない」というご意見も当事者者から出ていました。
増えているとはいえ人口が多くない同胞をターゲットとするビジネスを、競合覚悟で起業するのはリスクの高い経営方針です。より安定した事業計画が策定するための知識、情報、支援が必要なことは明白でした。
ベトナム総領事館も事態を理解され、ベトナム人経営者に対する支援をどう行っていくのか今後検討したいとおっしゃっていました。
特定技能「外食」の創設によって外食従事者の数は大きく増え、その少なからずその中には将来において外食経営を目指している人がいることは容易に想像されます。大阪外食産業協会(ORA)としても外国人労働者のキャリアの一つとして外国人起業者に対する支援活動も積極的に担っていかねばならないと感じた研究会でした。
基調報告していただいた西成労働福祉センターの船岡敏和さんにあらためて御礼申し上げます。