外国人適性雇用プラットフォーム
定例研究会報告
第17回(11月17日)
「絶対に失敗しない外国人のための起業セミナー」として日本で起業をめざす外国人向けのセミナーを開催しました。
本セミナー開催の直前になって外国人が日本で経営者として活動するために必要な在留資格である通称「経営管理ビザ」の取得条件が改正され、必要資金の金額が500万円から3000万円に引き上げられるというショッキングなニュースが伝えられました。これは日本で起業をめざす多くの外国人の夢を打ち砕く残酷な改定でした。
そんな情勢の中で、「いつかは自分のレストランを経営したい。」「いつかは自分でビジネスをはじめたい。」と多くの人が語る夢に向けて何を準備しなければならないのか、3人のスピーカーに語っていただきました。
まずは神戸で外国人の起業支援を行っている司法書士の井上佐知子さんからのお話です。井上先生からは経営管理ビザの扱い方について要注意ポイントを説明していただきました。落とし穴となる事態として3つあげられました。
一つは名義貸しは違法だということです。制度要件を満たしている他人の名義で操業を行うことはぜったいしてはいけないということです。信頼できる知人であってもこれは違法であり、またこれを安易に提示してくるブローカーなどの口車に乗せられてはいけません。またそういう意味でも契約は口約束ではなく、書面できちんと作っておくべき、というのが2点目。最後に、これは制度面のことですが、収益をあげていないと事業が破綻していなくても在留資格が取り消されます。赤字決算はできない仕組みになっていることも外国人経営者にとってはたいへん厳しい条件です。
次に行政書士の宮本政幸氏に今般の経営管理ビザの改定の要点をお話しいただきました。
資本金の金額が3000万円へと6倍に引き上げられたことに加え、日本語が堪能な常勤職員が1名以上、3年以上の経営経験または修士号以上の学位が必要との情報が提供されました。また事業計画についても専門家の評価が添付されていなくてはならず、これは商工会議所などで相談を受けるとよいことが説明されました。
資本金の額が3000万円に引き上げられたとしても、海外の富裕層が在留資格取得目的のためだけにダミー会社をつくることを防ぐことはできません。一部の悪質な富裕層を排除するためにやる気のある多くの起業家を排除してしまう結果となっています。また、経営管理ビザの取得のために経営管理経験がないとダメというのもおかしな話しで、そもそも経営管理ビザがないと経営管理の経験もできないはずですから、鶏が先か卵が先か、みたいな制度矛盾になっています。
次にORAの会員企業であり、現役の外食業経営者である3人の社長さんからお話を聞きました。
加藤社長は外国人活躍のために企業が行わなければならない3つのポイントがあると説明されます。1.キャリアプランの設計 2.事業計画の明確化 3.採用計画の明確化です。中でも3の採用計画です。在留資格に応じた外国人の受け入れ体制をちゃんと準備しているのかということが問われています。こうしたことを通じて会社の文化として外国人活躍が位置づいていくと力強くお話しされました。
続いて(公財)西成労働福祉センターの船岡敏和さんに長年取り組んできる大阪市西成区における外国人支援の活動から、ベトナム人による外食・食品産業の状況についてお話ししていただきました。
西成区では現在人口減少が止まっており、その大きな要因が外国人人口の増大です。外国人が西成区の活力を支えている状況があり、その中の一つとして外国人による事業経営があり、人、物、金をひきつける動因となっています。ベトナム人はその中で中国人とならんで人口構成のトップを占める国籍であり、この10年くらいの間にベトナム料理店やベトナム食材店がたいへん増えており、目立っています。しかし出店数と同時に撤退店数も多く、できてはつぶれる状況があり、これが過剰出店なのかどうか吟味する必要があります。
西成区には同胞の居住率が高いことと出店コストが安いことがこうした状況を生み出していますが、競合が厳しい環境で安易な出店になりがちな状況があり、経営判断として過剰出店に巻き込まれていないかどうかまず検証する必要があります。残念なことにすでに過剰出店であるにも関わらず西成へに出店をすすめるブローカーも存在して追えり、撤退したお店もブローカーに多額の手数料を支払っていたことも調査で明らかになっています。外食事業においてロケーションの判断は極めて重要であるので、ブローカーの口車に乗せられないよう慎重な判断が必要です。
鍋島はこの外国人適正雇用プロジェクトの統括として本日の教訓を以下のようにまとめられました。必ず日本の専門家に相談すること。2.ファイナンスの計画をしっかりもっておくこと。
起業にあたって同胞からの情報は外国人起業者にとってもっとも重要なものではありますが、その中には違法であったり無理があったり、中には詐欺的なものがあります。法的な裏付けをもって重要なことを正しく伝えてくれるのが日本の資格を有する司法書士や行政書士などの専門家です。また資金計画は資本金が3000万円に引き上げられたことによってますます重要になります。借金をすること自体が問題なのではなく、返済が無理なく行われる事業スキームとなっているかどうかが重要です。そして事業が想定したように進まなかった場合の撤退計画もしっかり持おく必要用があります。失敗したら家族がひどい目に合うというようなリスクを負って起業するのはあまりにも危険です。